北海道の日々2

3月3日、私は睡魔と共に成田にいた。前日の深夜、旅行の楽しみである化粧道具の小分けに励みすぎたからだ。(女は小分けという言葉に目がない生き物だ。さらに小瓶となれば祭気分になり、小瓶に液体を詰み変えることはいわば正月&盆騒ぎである)眠気と戦いながらやっとの思いで搭乗券を発行し、眠気覚ましに手を2回ほど洗うと、保安検査を通る時間となった。私は保安検査をいかにスマートなスタイルで通過するかに命をかける戦士である。この日もいつも通り、コートを早々に脱ぎ、搭乗券片手に万全なスタイルで臨んだ。吸い込まれる荷物を確認、未だ謎なゲートを通りいざ荷物を!と思ったところで声をかけられた。「すみません、こちらはナイフでしょうか?」

 ナイフ…ナイフだ。はっと見ると鍵と一緒にサバイバルナイフが付いている。いや、これは、確かに、ナイフだな…このナイフは恋人から贈られたもので、ナイフハサミヤスリ何でも多目的サバイバルグッズである。コンクリートジャングルを生きるサバイバーには必要不可欠、航空会社に勤める社員から見れば危険物に間違いなかった。まさか保安検査で引っかかるとは、敗戦である。負け犬と化した私は「えっ?あの人…」という目で見られながら荷物カウンターまで爆走することとなった。めっちゃ恥ずかしい。

 手荷物ではダメだが、預け荷物なら大丈夫とのことなので持ち込もうとしていた1.5リットルリュックに詰め直した。荷物も預けたし、これでまたスマートに保安検査を通れる、などと思っていたがまた呼びかけられた!気持ちはもうテロリスト、危険人物である。裏に呼ばれ、恐る恐る話を聞くとなんとリュックにライターが入っているという!ライター⁈流石の私もライターが預け荷物禁止なのは重々承知、なんなら記憶にない。

「すみませんね、丁寧なことにここら辺にライターが入っているとメモを職員から受け取りました。分かりますか?」塾講師のような見た目の職員にメモを渡され、眉間に5億ほど皺を寄せて見ると確かにリュックのイラスト上部にライターらしきマークがされていた。「いやーライターなんて入れた記憶が」などと阿保のようなフラグを立てながら荷物に手を突っ込む。そういえば、家出る直前に北海道の気温がマイナス2度と知り、「ジャンバーがたんねぇよお嬢さん‼︎!!!」と叫びながらジャンバーを入れた。アレだ。記憶はまやかし、しかし時に真実である。ジャンバーのポッケをみるとやはりライターがお淑やかに収まっていた。「女性はメイクでライターを利用されるので、うっかり入るものなんですよ〜」と河合塾講師めいた職員は優しくフォローしてくれる。彼の眼鏡奥の瞳はDon't worry…と語りかけていた。世界は私をテロリストとは思っていない、ただの飛行機慣れしてない若い娘と認識してくれている。優しい世界だ。「いや、破棄していただいて結構です。」

 

すっかり眠たさも消えた私は、睡魔と100円ライターに別れを告げ、札幌へと飛び立った。